FAQ:よくいただくご質問

「FAQ」一覧
トキの寿命は何年くらい?
トキの雌雄は、どのようにして見分けるのですか?
「トキ」という名前の由来を教えてください。
ふだんトキを飼育していて、いちばん大変なことはなんですか?
トキにとって住みやすい環境とは、どんな環境でしょう?
日本のトキと中国のトキは、同じ種類ですか?

トキの寿命は何年くらい?

はっきりとはわかりません。

飼育されているトキで最も長生きしたのは日本産トキのキン(1967〜2003)です。キンは、1967年生まれの雌で、翌年の3月保護され、36才まで生きました。1995年に死亡した雄のミドリは、1981年に佐渡トキ保護センターへきました。佐渡で野生のトキの巣立ちが確認されたのは1974年が最後なので、ミドリは21年以上生きていたと考えられます。

一般に、動物は、野生よりも飼育下の方が長生きする傾向にあります。野生のトキの寿命は、今までに調べられてはいないので明確ではありませんが、推定で10年から15年程度とも言われています。

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トキの雌雄は、どのようにして見分けるのですか?

トキは外見上での性別判定は困難です。(雄がやや大きい)

佐渡トキ保護センターでは、ふ化したヒナの卵の殻に付着している細胞を採取してDNA鑑定を行っています。(自然ふ化したヒナの場合は血液を採取して鑑定します)

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「トキ」という名前の由来を教えてください。

和名「トキ」「朱鷺」

トキは、「ツキ」または「タウ」の名で、奈良時代から記録に残っています。日本書紀にには「桃花鳥(ツキ)」という記載があります。「ツキ」の意味はよくわかりませんが、「桃花鳥」という表記は、いわゆる朱鷺色と呼ばれる羽色に由来したものでしょう。現在の呼称「トキ」は、「ツキ」の音が転じたものと考えられていますが、詳しくは分かっていません。

英名「Japanese Crested Ibis」

「日本の冠羽のあるトキ」という意味です。トキの後頭部には冠羽と呼ばれる長くて細い羽の束があり、驚いた時などにこれを立てて広げます。

学名「Nipponia nippon」

学名は世界共通の約束に従って命名されており、現在は人名のつけ方と似た方法が用いられています。これは姓名の姓にあたる属名と名に当たる種小名で学名を構成するもので、全てラテン語で記されています。つまり、トキの属名はNipponiaであり、Nipponia属はnipponという1種だけから成り立っています。

江戸時代の末期、長崎のオランダ商館に勤めていた医師シーボルトは、日本の民具、美術品、動物や植物の標本等をたくさん収集し、オランダへ送りました。この中にはトキの標本も含まれていました。当時ライデン博物館の館長だったテミンクがこれを研究し、Ibis nipponという学名をつけて1835年に発表しました。その後、1852年にライヘンバッハという研究者がNipponia属を新設し、1871年、グレイという研究者がNipponia nipponとして分類しました。

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ふだんトキを飼育していて、いちばん大変なことはなんですか?

トキにとって住みやすい、よい環境を作ることです。

トキに限らず鳥類一般にあてはまることですが、鳥は繁殖期になると神経質になったり、攻撃的になったりします。卵やひなを天敵から守るためです。トキの場合、3月から6月くらいが繁殖期ですが、この時期にはなるべくトキたちをそっとしておくように、彼らを不必要に刺激しないよう十分注意します。

繁殖期に入ったら、孵卵器や育すう器(人間の哺育器のようなもの)をいつでも使えるように準備しておかなければなりません。卵や孵化したばかりのひなは温度や湿度の変化に弱いので、こういった機械を用いて温度や湿度、照度などをコントロールします。孵化後2か月もすれば体の大きさも親と同じくらいになり、温度や湿度を調節する必要はなくなります。

常に気をつけなければならないのは餌です。トキは生きたドジョウや小魚を好んで食べます。しかし、このような餌には、寄生虫の心配がつきまといます。過去には飼育していたトキが寄生虫で死んでしまったこともありました。そこで、より安全にトキを飼うために、今では馬肉を主体にしたトキの人工飼料が作られています。これは、スイスのバーゼル動物園が開発したもので、トキと同じように絶滅の危機に瀕しているホオアカトキの飼育に用いられました。この人工飼料のおかげで、ホオアカトキは、今や世界中の動物園で繁殖するようになっています。佐渡トキ保護センターでは、人工飼料とドジョウを組み合わせてトキを飼育しています。

トキは比較的大型の鳥で、長いくちばしを持っています。何かに驚いてパニックに陥りケージの中を飛び回ると、フェンスに激突して翼やくちばしを痛める可能性があります。翼を折れば飛べなくなってしまいますし、くちばしをおると餌を食べられなくなってしまいます。このような事故を防止するために、ケージの内側にネットを張り巡らし、トキがフェンスに激突しないようにしています。

トキは生き物です。ですから、職員がいくら頑張ってみても、いつもうまくいくとは限りません。起こりうることを十分に考え、できるだけの努力をしたなら、あとは焦らずに待つことが何より大切です。

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トキにとって住みやすい環境とは、どんな環境でしょう?

そもそも日本にいたトキは、人間が住む場所のすぐ近くで暮らす里の鳥でした。トキがまだたくさんいた頃は、トキが餌を採るために田に入り早苗を踏み倒してしまうので、農民は害鳥として嫌っていたようです。明治時代になって一般の人々も狩猟ができるようになったため、トキは次第に人里では暮らせなくなり、山の中へ、人の暮らしから離れたころへと追い詰められていきました。そして、昭和40年代になると、日本でトキが残っているのは、能登半島と佐渡島の山中だけとなってしまいました。この場所に人はごくわずかしか住んでおらず、その人たちが作る山間の田や小川でトキは餌を採り、山中にねぐらや巣をかまえていました。

これらのことから考えて、トキにとってよい環境とは、次のようなものでしょう。

  • 餌を採る場所があること。ドジョウや小魚がいる田、サワガニがいる小川など。
  • 餌が十分にあること。特に、冬の間は、餌場が雪に埋もれてしまい、餌不足になることがあります。
  • 巣をかける大きな木を含む森があること。
  • 営巣地が静かで、抱卵と育雛(「いくすう」、ひなを育てること)を妨げないこと。(繁殖期に人間が巣の周囲を歩き回ったり、ワシやタカが頻繁に上空を飛ぶと、親鳥が営巣をやめてしまう)
  • 集団生活をする冬の間、ねぐらとなる場所があること。
  • カラスやテンといった天敵が多すぎないこと。

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日本のトキと中国のトキは、同じ種類ですか?

現在、日本のトキと中国のトキは、同じ種類に分類されています。したがって、日本産、中国産といってトキを区別する理由は全くありません。日本では、環境省やトキ保護センターが中心になってトキの保護の仕事をしています。私たちが増やし、保護したいのはトキという種類の鳥であって、「日本産のトキ」ではありません。ですから、日本と中国は、協力してトキの保護に取り組んでいます。

動物の種類を分ける学問分野を動物分類学といいます。近縁でよく似た動物の種類を分ける場合には、今までは体の大きさや形、色、体の構造、それに声や行動といった特徴に注目していました。

平成14年度に環境省が実施したトキの遺伝的系統関係解析調査で、日本産の個体と中国産の個体について遺伝学的解析を行ったところ、両者が同一の種に属していることが判明しています。

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